2012年6月7日木曜日

韓国大邱の旅 ③海印寺、星州で出会ったオモニたち

2日目に伽耶山国立公園の「海印寺」(ヘインサ해인사)を訪問しました。大邱の中心地から西へ車で約2時間、アーティスト金星洙(キムソンス김 성수)さんのご案内です。帰路、大邱までの中間地、星州(ソンジュ성주)の金さんのアトリエにもご案内いただきました。

■清らかな渓谷を登ると海印寺、静謐な「大蔵経板殿」、そして観光する働くオモニたち

静かな渓谷を約30分ほど歩くと海印寺が、そのなかに「八万大蔵経板殿」があります。
-「八万大蔵経版」は高麗高宗王時代、モンゴル侵攻によって焼失した大蔵経を1236年から12年をかけて彫ったもの。(韓国観光公社 『韓国』)

湿度と温度の調整を建物の構造によって行っており700年以上朽ちることなく現存しています。
ここから中は撮影禁止です。大蔵経板が保管されている建物は外から覗くだけで中には入れません。

大蔵経板殿門       八万大蔵経板(韓国観光公社掲載写真)












げら子 ひんやりしてる、風が吹き抜けてる。それにしても気の遠くなるようなこと、宋さんのアートに通じるとこあると思う。

ごん太 隙間から板がずらーっと並んでる。えらい広いなぁ。見たことないけど国会図書館の書庫てこんなんかな。

遠大な手仕事の御殿を後にして降りていくと、現実の世界です。観光するオモニたちが僧侶の説明を熱心に聴きいっていました。





















ごん太 悠々自適のオモニの観光名所みたいやな、京都のお寺の観光光景や。おばちゃんパワーや、おっちゃんはちらほら。

げら子 ほんまやな。あ~ハルモニしゃがんでしもた!
こちらはハルモニが肉体労働してはる。制服のようなジャケットが可愛らしい。


















■ポツンと人気のないテンジャンチゲ(味噌鍋된장찌개)店、わらびを干すオモニ

観光地だけあって、下山途中には等間隔に食堂があります。そのなかで金さんがチョイスしたのがテンジャンチゲのお店でした。

9種のおかず 菜のごまあえ、わらび、魚介のつくだに、貝のキムチ
菜のおしたし、ペクキムチ、古キムチ、大豆、正体不明1品
注文したのは、豆腐・菊菜としいたけのチヂミ・テンジャンチゲ















げら子 次から次と来るわ来るわ!全部で9種類や。では、不老マッコリで乾杯!(金さんは車のため飲めない、我々だけごめんやっしゃ!)

ごん太 とうふが美味いで、タレが辛い!豆の味がそこはかとなく漂う、お見事。チゲの出汁もええねぇ。

お腹満腹、マシッソヨ、カムサムニダ!とお店をでたところに、なにやら干しているご夫妻。
ここでもオモニの存在感ありです。


















げら子 これなんですか~!山からとってきたわらび(コサリ고사리)やて。あ、さっきでてきたおかずにあったやつ。

ごん太 そうそう、かめば味がでる。ここで採って手間かけて干して出してはんねん、うまいはずや。


■金さんのアトリエ、そして隣人夫妻のつくったマウワウリ(チャメ참외)のうまさ!


大邱星州(ソンジュ)はマクワウリの名産地、今マクワウリの出荷最盛期です。広大な土地でマクワウリを作っているご夫妻にその場でざくざくとナイフで剥いたウリをご馳走になりました。金さんの仲良し隣人です。

真ん中がマクワウリご夫妻       出荷を待つマクワウリ















げら子 うわー、甘味が深いで、美味しい!今出荷の最盛期やねんて。主のアボジと可愛いいオモニ、アボジにもったいないくらいやね。お二人ともどしっと地に足ついてはるな。

ごん太 ざくざくとワイルドなんがまたよろしな。これ日本のコリアンタウンで4個千円もしまっせ。なんと贅沢なこと。



最後に金さんのアトリエをご紹介せねばなりません。


庭のオブジェ、向うの蒔はストーブ用、ご自分で巻割り
室内アトリエの作品たち










































玄関から庭、屋内、すべて金さんの作品で埋まり、ゆっくりとした時間が流れています。日本でも展覧会が予定されているそうです。


3日間の大邱の旅(5/1-3)は、通りすぎただけでしたが心に染みました。都会と田舎、名刹、アーティスト、農家、観光の人々との瞬間の出会い、そこで舌鼓をうった数々の食べ物、そして「不老マッコリ」。ソウルや釜山、他の地方都市とも違う空気の土地、ゆったりとして洗練されたにおいを感じました。
そして、伽耶文化、高麗文化から受け継がれた手仕事を、宋さん金さんのアートに見ました。

ギャラリスト俊子オンニ、 山下さんにカムサムニダ!
俊子オンニ「ギャラリー佑英」HP ご覧ください。


韓国大邱のレポートはおしまいです。
6月中にはタイをご紹介する予定です。



2012年6月6日水曜日

韓国大邱の旅 ②ハンオク民泊「トンダソン」おかみの朝ごはん

「トンダソン」は、韓屋民泊です。
トンダソンという屋号は、「朝鮮王朝後期に作られた東茶頌(동다송)という茶道を詩で説明した本のこと(韓国百科事典サイト Naver사전)」に由来しているようです。
韓国事情通の山下龍夫さんからご紹介いただきました。
山下さんのフェイスブック (韓国の庶民の暮らしと息吹が伝わってきます)

韓屋風情の設計、中央の庭のぐるりに客室が8部屋ほど、浴室とトイレは共同です。
オンドル部屋は食卓だけのシンプルなつくり、げら子さん俊子さんごん太さん、期待どおりのお宿です。

玄関         窓からの風景   オンドル部屋














大邱中心地から東北へ約40kmのところに位置し、八公山道立公園(팔공산도림공원)の入り口です。ここからは35kmの登山コースになっています。ちなみに八公山は仏教文化の聖地と言われているようです。

1日目遅くに到着、さすがのげら子さん、ごん太さん、俊子さんも緊張のためゆっくりと飲めなかったようです。ごん太がマッコリを頼みました。

マッコリに、チヂミ、キムチ、大根、オレンジ



















ちょっと、感激!おつまみも作って
くれはった、このチヂミ美味しそう。
乾杯!
どれどれ、このキムチ、きっとおかみ
さんの手づくりやな、やさしいお袋の
味がするもん。
マッコリもしゅわしゅわしてる、手づくり
かな~。




ごん太 これはこれは、明日の朝食に期待が膨らむなぁ。

げら子 玄関の看板に「茶」てあったやん。なんでかなと思ったけど、屋号のいわれなんやね。ごん太がもっと語学力あったら詳しく聞けるのにね。ごん太もっと勉強せな!

早朝は近くを散策、朝に爽やかな空気を満喫し、いよいよ朝食です。

キムチ、菜、のり、じゃこ、練物、野菜と卵のスープ



















げら子 やっぱり、ア・タ・リ!ビールでまずは乾杯。スープのおだしはなんやろ、深みがあってあっさりしてて、は~、ごはんもすすむわ。もうこの朝食だけでも満足。俊子オンニはクッパかいな、お、それも美味しそう。

ごん太 ほんまに期待に違わずや。

この日も夜遅くに帰着、またまたマッコリで締めました。
翌朝はチェックアウト、朝食メニューにおかみの気持ちがこもっています。

菜サラダ・菜おしたし・卵焼き・じゃがいもソーセージジョン・キムチ・エゴマ葉漬け
わかめのスープ

















ごん太 ほーっ、ワカメのスープはお誕生日のものやろ。おかみさんの気持ちが伝わるな。魚介類のだしの味、わかめもご立派。

げら子 おかみさんの腕は確かや。素朴な味がたまらんね。


宿泊は平日のためか我らだけでした。他の部屋に人々がいるのですが、どうも宿泊客には思えません。おかみさん「タりエヨ(娘です)」って。空室の折には子供達の宿泊となっているとは便利で効率的な運営です。

夜遅くに帰ってはマッコリ、朝からビールを飲む我らをタイミングよく手づくりの美味しさでもてなし温かく見守ってくれました。
「マッコリが美味しい、手づくりですか?」というと、お土産にマッコリを下さいました。
それは「不老マッコリ」だった!

お世話になりました。夕食をいただけなかったことだけが心残りです。
宿泊費は平日一人40,000ウォン-日本円 6/5現在レート(65円)で2600円-(週末は50,000ウォン)

品のよい料理上手で素敵なおかみさん(写真撮影を失念)、ご紹介いただきました山下さん、チョンマロカムサムニダ!

次回は「海印寺から星州で出会ったオモニ」です。



2012年6月4日月曜日

韓国大邱の旅 ①芸術家が集う食堂

げら子とごん太は昨年実現できなかった大邱(대구)へ。

金海空港から亀浦(구포)へ、亀浦からKTXで1時間余りで東大邱(동대구)駅に着きました。
おしゃべりしているとあっという間に到着、あわや乗り越すところでした。




東大邱駅































■70-80年民主化運動の地、今、文化のかおる街

大邱は1970~80年代軍事独裁政権を主導した三人の大統領、朴正熙、全斗煥、盧泰愚の出身地です。
-軍事独裁政権が続いた70-80年代、それを打破しようと闘った「学生民主化運動」が最も盛んな時期でもあった。催涙弾のガスに涙を流しながら民主化のために闘った私たちの先輩たち、同僚たち、後輩たち。彼らが憤懣やるかたない思いを吐露しながら、一杯のマッコルリに希望を見出して未来を夢見たのが、当時のデポチプだ-(鄭銀淑『マッコルりの旅』)

伝説のデポチプのハルモニは引退されたとのこと。


今回の大邱は、げら子の友人のギャラリストが懇意にしておられるアーティストの展覧会にお邪魔する、これがメインの目的です。ギャラリスト俊子オンニの後について珍道中の始まりです。


「鳳山文化会館(봉산문화회관)」は2004年設立、 大邱の芸術家の作品の発表の場のようです。

ポンサン文化会館、ポンサン文化通り                  メイン通りから入った路地   

げら子 着ましたね。文化の香りがする。
ほら、掘り出しモンありそうな骨董やさん、手づくりのブティック
や、 ええけどな高そうやな。

ごん太 静かな落ち着いた街並みや。ちょっと入った路地は韓国の家、
ええ佇まいやね。
ちょっとワクワクしてきたで。はよ、行こ!


-「紙物・-空-」は韓国の現代アート作家「宋光翼(송솽익)さん」と日本の作家「伊藤祐之さん」との二人展です。
-「彼(宋光翼)は熊手鍬で畝を作って畝間と深さを推し量る農作業を掘り起こす農夫の視線で労働の価値と観照をテクスト化する(金永世 09.5 ポンサン文化会館)











なんか難しいこと言うてはるけど、
入り口入ったとたん空気が違う!
見たらわかるねん!!ね、ほら。
ていねいにていねいにひとつひと
つ手仕事を積み重ねて、気が遠
くなるようなことを積み上げて作っ
てはる。
あ~、心が澄んでくるワ。

ごん太 ほんまについてきてよ
かった~。
ここは時間がとまったみたいや。

宋さん、アーティスト、ギャラリストのみなさん




















■この日はオープニング。幸福食堂(행복식당)で○×△□▽・・・・。

宋さん、宋さんのお仲間のアーティスト、伊藤さん、みなで「幸福食堂」へ
繰り出しました。

乾杯!不老マッコリをやかんにいれて           宋さん・金さん               伊藤さん     



皆さん、芸術談議してはるんやろなぁ。
すんごい早口で一斉にしゃべりはるから、
ボクさっぱりわかりません。

「マッシッソヨ」
「イエー」
「ケンチャナヨ」 の繰り返しだけや。





げら子 そやけど皆三々五々やってきて、主賓を待つとかせーへん
ねんね。もう5回位乾杯したで。
皆さん芸術家には見えへん、普通のおっちゃんやねん。
って多分日本の芸術家っぽさがない、その人があんな
すごいもん作りはるからその差が楽しいな。

ごん太 それは同感!気取りがあらへん、ボクらも友達みたいに
接してくれはるもん。

げら子 マッコリは「不老マッコリ」。清涼感あってバランスがとれ
た味やわ。チヂミ、スユク、キムチにいろんなつまみ。
普段の晩ごはんのおかずできどらんでええな。

-大邱のマッコリは「不老マッコリ」が90%を占めるようです。(鄭銀淑『マッコルリの旅』)
今回の旅ではすべてが「不老マッコリ」でした。 

-と、この日は我らの宿は遠く、途中で失礼することに。すると、宋さんのお気遣いでタクシーで送ってくださるという。そして送って下さった方は宿からまた大邱まで帰られました。カムサムニダ!
その後、歌って踊っての宴が繰り広げられたようです。あ~残念でした。


■大邱の名店、ハンオクチプで「キムチチム」を堪能

翌日もご馳走になることに。
水曜日19時過ぎ、店内はぎゅうぎゅうの満席、これ以上入らないというところに入るのです。
地元の名店だそうです。

キムチチム店 暗い路地を入った突き当たりに











熟成させたキムチ、色合いが違う      深い味のキムチチム     














げら子 へ~!何とも言えん深~い味。豚肉はボロボロになるまで
煮込んである。キムチは醗酵味がすごく深い味。

ごん太 ボクも初めての味。マッコリもごはんもすすむ。
というても、マッコリはでてこなかったな。
最初、鍋の上にラーメンの袋が置いてあったから、最後に
ラーメンで〆るみたいやな。
壁はみんなのメモ帖や、ボクも書かせてもろた!

げら子 いろんな人が入れ替わり立ち替わりで、ぎゅぎゅう詰めで
座らはるのは、大邱流?アーティスト流?ようわからんけど
「皆友達(모든 친구!」というのが伝わってくるわ。


大邱の2日間は、韓国の前線を走るアーティスト達が集う食堂で「マシッソヨ!」の連続でした。気取らない仲間達の楽しい宴、そこにすんなりと同化できる空気がありました。
民主化を願って闘った若者のその魂が芸術に連なっているのでしょうか。

次回は「民族旅館に泊まる」をレポートします。